音円盤アーカイブス(06年1月2月)

JOE LIVE
ジョー・チンダモ2日目、2005年夏、イタリアのウンブリアジャズ祭に出演したときのライブソロパフォーマンス作品です。
ウンブリアジャズ祭ってこんなに、素晴らしい劇場で開催されていることを知りませんでした。
チンダモ自身、たぶん感激したであろうし、最高の演奏ができたからこのアルバムをリリースしたのではなかろうか?
このソロアルバムにはチンダモがピアノをはじめて以来培ってきた経験、知識、情熱、しいては音楽を通じて発される平和への願いや人間愛といったものが、ナチュラルに表現されているといっても過言ではない。
緊張はしていたのだろうけど、そこは百戦錬磨の一流プロミュージシャン、いつもの粒立ちの良い軽やかなタッチのピアノが聴ける。
全編ソロということで、テクニックのデパートに陥る事もなく、極めて冷静で平静のパフォーマンスが維持されており、こういう場でも自身を見失わない平常心は対したもんだと思う。
ソロワークなのでトリオ作品にくらべ、曲調や中間部の展開では日頃あまり聴けない細やかなテクニックを使用する個所もふんだんに聴ける。
ただ、それらがテクニックの為のテクニックなのではなくて、音楽的に必然性のある表現、流れがごく自然につながるテクニック表現なので、無理がなくかつ淀みない。
これって簡単なことのようで、実は最も難しい事のように思う。
それをいとも簡単に為し遂げたJOE CHINDAMOってやはり凄いピアニストだったんだと・・・
インナースリーブの中ほどにはオスカーピーターソンと一緒に写っているチンダモの軽く微笑んでいる姿があった。
私自身、ピアノソロアルバムは前にも書いたかもしれないけど苦手としている分野なのですが、これを機会に色々聴いてみようかという気にさせる作品でした。
JOE CHINDAMO (P)
録音は2005年7月12,13,14日 TEATOR PAVONE, PERUGIA
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LEROY WILLIAMS
ちょっと名がしれているレーベルに当てはめたらRESEVOIRやUPTOWN,SHARP-NINEぐらいからリリースされてもおかしくないベテラン有力メンバーによる超マイナーレーベルJAZZCHILD RECORDSからリリースされた作品。
なんと、活動歴は40年を軽く越すベテラン、LEROY WILLIAMSの初リーダー作です。
これは意外でしたね。
バリー・ハリス関連やザナドゥレーベルなどで、よく名前は目にしているはずなんだけれども、本人に目立とうという気がないのか、今まで一枚もリーダー作を吹き込まなかったようだ。
あきらかに、エルビンやブレイキー、トニー・ウィリアムスのようなリーダー型のドラマーではなく、職人気質の強いプレイヤーなのは間違いない。
そういえば、ジミー・コブも最近でこそリーダー作のリリースが続いているけどそらまではほとんどなかったものね。
で、演奏されている音楽はというと、これが極楽、極楽の世界で、リアルタイムでジャズの歴史を潜り抜けてきたものしか出せないと思わせる様な説得力のある音。
難しい事はほとんど演っていない。決して器用とはいえない彼らの演奏は。おそらく大学のジャズ研クラスでもこなせるような内容かもしれない。
しかしである。ここには彼らでしか出せない上手く形容できないのだけれど「魂」が込められた音がある。
ギタリストのRONI BEN-HURはバリー・ハリスが見つけ出したギターの逸材だったと記憶しているけど、ここでも彼らの音楽性をよく理解したオーソドックスなんだけれどもイマジネイティブなプレイを行っていて評価できる。
リチャード・ワイアンズのいぶし銀のピアノも健在。
WALTER BOOKERのベースだけは???なんですが、ここではそんなに違和感感じません。
目をつぶって聴いていると50年代後半のレコード聴いているのかと錯覚するかもしれません。
これって、褒め言葉です。もちろん。
ラスト曲のマイルス「MILESTONE」は古い方の曲です。念のため。
メンバーはRONI BEN-HUR(G)RICHARD WYANDS(G)WALTER BOOKER(B)LEROY WILLIAMS(DS)
録音は2003年3月10日 NYC DAVID BAKER
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BENITO GONZALEZ
ベネズヘラ生まれの若いピアニスト、BENITO GONZALEZが2004年にリリースしたデビュー作品。
若き巨匠、クリスチャン・マクブライドとアントニオ・サンチェスを迎えピアノトリオで2曲、それにルネ・マクリーン、ロン・ブレイクを参加させた内容となっています。
この作品、実は12月初旬に入荷していたのだけど、聴く前に売れてしまってなかなか聴くことが出来なかったもの。(お客様最優先なのです!)
結論から書きますと、直ぐに完売しただけあってこの作品、ハイグレードな内容の好作品です。(重箱の隅をほじくるような当店のマニアックな品揃えに食いついてくるお客さんの見識の高さは、言うまでもなく分かってもらえると思います。)

マクブライドはもとより、サンチェスのドラミングが素晴らしいです。
この強力なリズムセクションを従えて無骨とも形容できる堂々たるピアノプレイを披露するGONZALEZ君。
トリオで2曲しか演奏されていないのは、ゴンザレスのオリジナル曲を聴き進めていくにつれ判明した。
菅が入って賑々しく演奏した方がしっくりくる曲調なのですね。
モンクの楽曲に現代ブルックリン派のマナーが合体したような作品はオリジナル性が高くとても魅力的です。ためしに3曲目「THE WALKER」を聴いてみてください。
かっこいい楽曲をロン・ブレイクやルネ・マクリーンが吹奏していく様はサックスファンにもきっと喜んでもらえると思います。
ロン・ブレイクってあまり個人的にいい記憶がなかったのですけど、こんないいテナー奏者だったんだ。これはちょっと新たな発見でした。
メンバーはBENITO GONZALEZ(P)CHRISTIAN MCBRIDE(B)ANTONIO SANCHEZ(DS)RENE MCLEAN(TS)RON BLAKE(TS,SS)PERNELL SATURNINO(PER)
録音は2004年3月16,17日 BLOOKLYN,NYC
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BOB ROCKWELL
1992年にマシュマロレコードからリリースされたBOB ROCWELLの日本盤。
さすがは上不さんがプロデュースしただけのことはあって、日本企画独特のわざとらしさが微塵もなくナチュラルな仕上り。
この作品、上不さんのお気に入りDUKE JORDANがサイドメンで参加しているという店がミソなのですね。
STEEPLECHCEからリリースされたデビュー作を聴いて以来ずっと追いかけているBOB ROCKWELLだけど、デューク・ジョーダンのような超ベテランとの共演作は初めてだったので、「ジャズ批評」で、上不氏がレコーディングした由を発表したのを読んで以来楽しみにしていた。

実際、情報を知ってからリリースされるまで3年ちかくかかったのではないか?
レコーディングは済ませたけど、リリースする為の資金的な面で困難だったのが推測される。現にこの作品、センチュリーレコードからの発売となっていて、完全独立のマイナーレーベルの経営は今も昔も大変なのが実感されます。
マシュマロレーベルは、現在M&Iから力作を矢継ぎ早にリリースしていて、確かこの作品も再発されたはずです。
ロックウェルの魅力は既にこのブログで何度も触れているので繰り返しになるので書かないけれども、こういう奏者に本当に日が当たらない限り我が国のジャズシーンもお門が知れているとだけ今日は言っておこう。

今でこそ、STUNTレーベルから作曲家シリーズの作品を出して、プレイそのものがこの作品の録音時1990年より、若干オールドスタイルに戻った感のあるROCKWELLであるが、当時はモーダルなスタイルで歌心ある暖かい音色のフレーズを連発する無理した例えが許されるならば「リッチー・カミューカがコルトレーンのフレーズを吹いた」ようないそうでいない、ユニークな存在のテナー奏者であった。
この作品は、そんなROCKWELLがデューク・ジョーダンの土俵にすこしにじり寄り、一方、ジョーダンも平静のスタイルを装いながらいつものトリオでの演奏より少し革新が入り混じっているように聴こえる。 私の思い過ごしだろうか?
2人の互いのプレイに対するリスペクトが演奏から聴こえてくるような気がするのだ。
メンバーはBOB ROCKWELL(TS)DUKE JORDAN(P)JESPER LUNDGAARD(B)AAGE TANGGAARD(DS)
録音は1990年11月 COPENHAGEN

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GIL MELLE
幾何学ジャズで有名なGILE MELLE(ギル・メレ)の1989年BLUE NOTE盤。
これがリリースされた時は驚きました。
ギル・メレの名前は植草甚一さんの本でジャズを聴き始めた30年くらい前の高校生の頃から知っていたけど、実際耳にしたのは、大学に入ってからで何処かのジャズ喫茶でプレスティッジの「GIL'S GUESTS」を聴いたと思う。

話は脱線するけど、同じくギル・メレのブルーノート盤「パターンフォージャズ」に入っているギタリスト、ジョー・シンデレラの2000年リリース作品を最近発見した。(興味おありの方はお問い合わせ下さい。)
ついでに言ったらハル・ステインも現役で活躍し続けていて何と2005年新作が発表されました。
こちらは、VENTO AZUL RECORDSへもうすぐ入荷予定なので、このブログにもアップしたいと思います。

2人とも何万光年か先のはるか彼方の存在のミュージシャンで、見つけたときは驚きました。まだ現役で演っていたなんて・・・。
幼友達に何十年ぶりかで偶然再会したときのような気持ちです

ギル・メレのこの作品、以前の幾何学ジャズのギル・メレや普通のBLUE NOTEの音楽をイメージしたら、手痛い目にあいます。
はっきり言ってジャズではないからです。
多層的に絡み合うシンセ音や打ち込みが、メインでミニマルミュージックの要素もあるし、環境音楽みたいな面もある。BLUE NOTEというより、ウィンダムヒルや一部のECMの作品にあるようなサウンド。とことどころで挿入されるピアノやキーボードによるアドリブというより書き譜だろう、フレーズやアンプリファイドサックスかシンセの音なのか区別しにくいのだけれど短いソロが挿入される。
全体的に一貫して流れ続けるのはシンセによるシークエンス。
深夜、薄暗いBARでこういう音楽が小さい音で鳴っていたら逆にお洒落かもしれない。
海底深くでの酩酊気分を味わえるかも知れない。
翌日は二日酔いかもしれないけど・・・
GIL MELLE(ALL INSTRUMENNTS)
録音は1989年
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SIMON GOUBERT
SIMON GOUBERTの名前を知ったのは、本作と同じ(最近ではレア本紹介のローラン・フィッケルソン盤で御馴染みの)SEVENTHのスティーブ・グロスマン参加のトリオ作品を1994年に入手してからだ。
この作品はそれより後に買ったものなのですが、今見ると素晴らしいメンバーで録音している。
ベルモンド兄弟に、MICHEL GRAILLIER,EMMANUEL BORGHI,STEPHANE PERSIANI、ゲストでALDO ROMANO,CHRISTIAN VANDERが参加している。
綺羅星のような豪華メンバーで自作以外に、フィリー・ジョー、エルビン、トニー・ウィリアムスの曲を演奏しています。
ちなみに録音は1993年。
1曲目、コルトレーン好きの人はグッとひきこまれるのではないでしょうか?
薄暗いジャズ喫茶の片隅で聴くのには最高のナンバーで、LIONEL BELMONDのテナーはコルトレーンというより昔のスティーブ・グロスマンのようで凄く良い。
MICHEL GRAILLIERの音数少なめのロマンチックなピアノソロとの対比も面白い。
15分を越える演奏なんだけれども、時間を感じさせません。
何故かドラムはCHRISTIAN VANDERが叩いていて、SIMON GOUBERTのリーダーアルバムなのに、なんか変でしょ?
ちなみにラスト曲もALDO ROMANOが叩いています。
2曲目フィリー・ジョー・ジョーンズの「GWEN」ではSTEPHANE BELMONDがフューチャーされるラブリーな曲調のバラード。
光と影のコントラストを感じさせる、パースペクティブなソロは当時から既に光るものを持っていたのが分かる。
イタリアのボッソはいまや日本で凄く人気がでたけれども、これからはこのSTEPHANE BELMONDOにももっと注目が集まって欲しいところ。
タイプは全然違いますけど・・・
取り上げているナンバーも良曲が多くて、演奏内容充実の好盤として推薦できます。
入手は少し困難かもしれませんが頑張って手に入れてもらいたい作品です。
SIMON GOUBERTのドラムは、可も不可もなし、それよりもリーダーシップや作曲能力、ネットワークの広さ、プロデュース能力が評価されるかも知れないです。
なにも、演奏だけではないですからね、ミュージシャンは。
メンバーはSIMON GOUBERT(DS)STEPHANE BELMONDO(TP)LIONEL BELMONDO(TS)MICHEL GRAILLTER(P)EMMANUEL BORGHI8P)STEPHANE PERSIANI(B)ALDO ROMANO(DS)CHRISTIAN VANDER(DS)
録音は1993年7月28日、8月1日
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COLIN STEELE
スコットランドのトランペッター、COLIN STEELEの2000年作品。
このレーベルも最近、活動が休止しているようで、今までレーベルサイトから直接購入できていたのが昨年、秋に販売中止となってしまった。
先週、ACTからの最新作をN山さんからもらったばかりで、そっちも早く聴かねば・・・。

ヨーロッパ(東欧は除いて)のジャズは結構カバーしているつもりだけど、イギリスは一番弱いところでして、33JAZZやJAZZIZ、LINNなどのレーベルはまあまあ所有していますが大した枚数ではなくて、他のヨーロッパ諸国に比べてちょっと遅れているんじゃないのという認識だったのです。
最近、このCABERやその他マイナーレーベル(たくさん有ります)の諸作を聴くにつれ認識を新たにしました。
無名だけど有能なミュージシャンが結構いるのですよ。
おいおい、ショップのほうでも販売をはじめようと思っていますのでこのブログと連動させて紹介していきたいと思います。
このCOLLIN STTELEなど、若手の中では先頭グループを走っているミュージシャンで、やや保守的すぎる傾向はあるけれど、安定した実力の持ち主だと思う。
このアルバムに関しては、全曲オリジナル作で固められていて、いつも思うのだけれど2,3曲はジャズメンオリジナルの知られている曲やスタンダードを入れて欲しいというのが正直なところ。
CDの時代になって60分強の時間、オリジナル作品一本で間を持たせるのはよほどの作曲能力か、演奏技量が無い限りキツイというのが本音なのです。

ピアノもDAVE MILLIGANもこのCABERレーベルから素敵なピアノトリオアルバムをリリースしていて、名手振りを発揮している。
2,3曲かいつまんで聴くにはなかなか、ご機嫌なジャズが展開されているといえるのだけど、そこから先をいかにステップアップしていくかが、今後の課題かも知れない。
ライブで聴けば、また印象が変わるかも知れないけど・・・
COLIN STEELE自身は有能なトランペッターであることをもう一度言っておこう。
メンバーはCOLIN STEELE(TP)JULIAN ARGUELLES(TS,S)DAVE MILLIGAN(P)BRIAN SHIELS(B)JOHN RAE(DS)
録音は2000年9月11,12日  SCOTLAND
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RACHEL ECRROTH
アリゾナ州出身のRACHEL ECRROTH は、現行のトリオを1997年にラスベガスで結成したらしい。現在はNY周辺で活躍中。
CD番号もないことから、明らかに自主制作であるのが分かります。
彼女のピアノは、氷細工に当たる光が角度によって微妙に変化する様な、繊細であり美しいタッチを拠り所にしている。ビル・エバンスや70年代のハンプトン・ホーズを彷彿させる点もところどころ見受けられる。
現代ヨーロピアントリオの雰囲気も感じられ、全体的に女性的で柔らかく淡いイメージがつきまとう。
おまけに筆力はあまりつよくないので、人によっては「ははーん、また、はいて捨てるほどある欧州ピアノトリオもどきの作品だな?」と思う方がでてこよう。
なるほど、演奏自体の求心力はそんなに強くないかも知れない。
それは認めよう。実際この作品の後に、エンリコ・ピエラヌンツィの最新盤「LIVE IN PARIS」を聴いたのね。
20年近く追っかけているエンリコに正直言っていささか、食傷気味だったのですが
久しぶりにトリオの演奏を聴いてみて、その横綱相撲ぶりと、トリオの一体感溢れる表現能力に舌を巻きました。
素晴らしいの一言です。
しかし、初めて聴いた時の新鮮さは、当然ないのです。
エンリコ自身がかってのエンリコの模倣をしているといえば語弊があるけれども、スタイルを確立すればするほどついてまわる宿命のようなものかもしれない。
ジャズジャイアンツ全てにあてはまる訳で、自分のスタイルを完全に確立しているからこそ、ブラインドホールドテストしても当たるのだろうし(もちろんソロフレーズだけではなしに、全体のサウンドからも指向するサウンドからスタイルは確立されると思う。)なにより、音にオーラが宿るのだと思うのだ。

彼女がエンリコに勝っている点は、フレッシュな点だけかもしれない。
音楽はスポーツではないので、優劣で語るものでは決してない。なにより、彼女のピアノからは表現していこうという強い意志が感じられるのだ。
ピアノトリオファンの方だったら分かってもらえると思います。
メンバーはRACHEL ECKROTH(P)KEVIN THOMAS(B)CHRISTOPHER BENHAM(DS)
録音は2005年10月10日  NJ
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BOZO
津上研太 、南博 、水谷浩章 、外山明 の実力派4人によるユニットの1st作がリリースされたのは2002年夏、あれから3年以上の歳月が流れ、ようやく出た待望の2作目。
この作品、もっと早くに紹介しようと思っていたのですが伸び伸びになってしまい、遅くなってしまった。
10曲中、ラストのショーター「THE ALBATROSS」を除いて全てオリジナルで固められた本作、曲作りが前作より幅が出ていて、楽曲とメンバーのプレイが有機的に絡んでおり奥行きの深い演奏となっています。
津上研太のアルトサックスの音、これが非常に素晴らしい。
メンバー全員を引っ張っているのは間違いなく津上のサックスだと誰もが思わずにおれない音。
今の優しい雰囲気ではない、野武士のような鋭い目つきをした、70年代初頭の怖かった頃の渡辺貞夫の音に似ている。
嘘だと思うのなら、5曲目「SUE'S SONG」を聴いてみて欲しい。
ライナーノーツの大友良英の文章には、津上の直球、変化球云々の話が掲載されていて興味深く読ませてもらったが、私には津上のサウンドはど真ん中に投げ込まれた直球に聴こえる。
今の日本のアルトプレイヤーで最もいいのは津上研太ではないか?
思わずそう言わずには、おられないほど本作での艶やかで骨太のアルトの音色は迷いがなく、真っ直ぐに投げられているのだ。
メンバーは津上研太 (AS,SS)南博(P)水谷浩章(B)外山明 (DS)
録音は2005年5月8,9日
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MOB TRIO
この作品、仕入れる事も出来るのに何故かほったらかしのままにしていて、先日N山さんから貰ったものを今、聴いている。
MATT WILSONは有名だけど、テナーのOHAD TALMORって初めて聴く名前だなぁ。
少し気になったので、バイオを調べてみた。
OHAD TALMERは19歳の南フロリダの学生の時にサックスをはじめた。
スイスで音楽活動をはじめ、グレン・フュレスを加えたコンボやZoundsというグループ、ビッグバンドなどで演奏。
ヨーロッパの名だたるミュージシャン、例えばヨアヒム・キューン、ウィーンアートオーケストラ、マシュー・ミッチェルなどと共演を重ね、1995年にNYに活動の拠点を移す。
1995年にマンハッタンミュージックオブスクールに入学し、1997年卒業後、以下の様なレコーディングを残している。
The Other Quartet" (Russ Johnson-trumpet, Jim Hershman-Guitar & Mark Ferber-drums)
"Ohad Talmor "7 Deja Vus" feat. Lee Konitz" (a 7tet with Russ Johnson-trumpet, Jacob Garchik- trombone, Jim
Hershman-guitar, John Silverman-bass & Mike Sarin-drums)
"M.O.B. Trio" (Bob Bowen-bass & Matt Wilson-drums)
"Scent of the Morning Dew" (Rob Thomas-violin, Jacob Sacks-Piano & Dan Weiss-Tablas)

M.O.B. TRIOで本作と同じOMNITONEに吹き込みがあり、この作品は2回目のレコーディングとなる。
サウンド自体は聴いてもらえば、分かると思うのですが良くも悪くも現代ブルックリン派のサウンドの特徴がでた演奏といって良いと思います。
ライブとはいえ、たくみに制御コントロールされた音で、ストーリーテリングに長けている点、抽象と熱狂の狭間を行き帰りし、浮遊感に富んだ語り口で聴衆をクールに打ちのめす演り方は、ブルックリン一派に共通した手法だといえる。
あまり多くはないであろうライブハウスのお客の拍手を聞けば、彼らの音楽が支持されているのが分かるだろう。
私自身、もしNYにいく機会があれば、有名ジャズクラブはそこそこにして「TONIC」「SMALLS」「55BAR」「FAT CAT」などの現在進行形のジャズがリアルタイムで聴くことのできるライブハウスにほとんどの時間を費やすであろう。

現場の雰囲気が見事にキャプチュードされた作品だと思う。
メンバーはMATT WILSON(DS)OHAD TALMOR(TS)BOB BOWEN(B)
2005年作品
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WOONGSAN
韓国のトップジャズボーカリスト、ウンサンの第2作目。
昨年6月にN山さんが、実はウンサンのコンサートを主催して、私も行く予定だったのですが急用で見ることが出来ずじまいだった。
コンサートは大盛況に終わったようで、惜しい事をしたなと思っていた。
2週間前、そのN山さんちへ研究会でお伺いした時に、ウンサンが2作目をリリースしているのを聞いたのです。
日本盤もいずれ出るとは思うけど、そこは、関心のある作品はちょっとでも早く聴きたいというのがジャズファンの悲しい性というもの・・・
そして、実際オリジナルは韓国盤だし・・・

探しました。
さっき、CDが届いたのです。
彼女のボーカルにギタートリオというフォーマットがベースとなっていて、英語とハングル二つの言語でブルージーにソウルフルに、時にパワフルに、スポーティーに思い切りの良い歌唱を繰りひろげています。
デビューアルバムが日本のマーケットを意識した作品とすれば、当作は日頃の母国での等身大のボーカリストとしてのウンサンを表現した作品といえるかも知れない。
サウンド的には少しベタなところを感じないでもないけど、ウンサンの歌唱は伸びやかで感情表現の部分において、これ以上やればやりすぎになるという一歩手前、寸止めのところまで表現する点など、そのコントロールの巧みさに舌を巻く。
正統派のジャズボーカルを期待するむきには、この作品はちょっとキツイかもしれないが、音楽好きのボーカルファンには歓迎されるのではないか?

とびきりのジャージーでブルージーなソウルミュージックが語られているから・・・

ジャケはすべてハングル語なので、曲を転記しておきます。
01.Call Me
02.回る,それでももとの場所...
03.W-O-M-E-N
04.I’d Rather Go Blind
05.酔っ払う
06.人生
07.Fine and Mellow
08.清凉里ブルース
09.Just Like(I Treat You Baby)
10.忘れなければならないなら
11.夢想
12.雨鳥
2005年作品
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ELIANE
スイス生まれで、現在NYで活動するボーカリスト、ギタリストのELIANEのファースト作。今日届いたのを聴いているのだけれど、自主制作にありがちな、CD-R作品です。
バイオ紹介には、リッチー・バイラークやこの作品に参加しているランディー・ブレッカーが賛辞を寄せていて期待のアーティストなのが分かる。
ジャージーな要素にブラジリアンなフレーバーをうまくからませ、スザンヌ・ヴェガ風のフォーキーな調味料を加えたような楽曲は魅力的で、オリジナル性を感じる。
ゲストソロイストとして、先のランディー・ブレッカーとマーカス・ストリックランドがフューチャーされている。
フューチャージャズっぽいサウンドにフォーキーでサウダージ色の強いELIANEのボーカルと、ストリックランドのうねるようなサックスが絡む7曲目など、Jazzlandのジゼル・アンデルセンのアルバムを想起させる様なところもあって、興味深い。
ジゼルよりは、ややジャズよりか?
どちらにせよ、ELIANE自身、既存のジャズの概念にとらわれず、様々な音楽の要素をミクスチャーし、消化したものをアウトプットしている。
そして、その音楽が生き生きとしている事に注目したい。
9曲目の「KNOWING THAT I'M A FOOL」なんか、80年代のアーネット・ピーコックのアルバムみたいで、良いです。
個人的にはこのアルバムの一押し曲!
ジャズボーカルファンより、先物買いのボーカルファンの方にお薦めしたいアルバムです。
メンバーはELIANE(VO,G)JENNIFER VINCENT(B,CELLO)HANGAR BEN ARI(ELB)MATHIAS KUNZLI(DS,PER)JEREMY MAGE(KEY)RANDY BRECKER(TP)MARCUS STRICKLAND(TS)
2005年作品
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OLIVIER MANOURY
これは、ちょっと面白いアルバム。
1953年フランス生まれのバンドネオン奏者、OLIVIER MANOURYがベース奏者とのデュオでセロニアス・モンクの曲ばかり13曲、演奏したアルバムです。
1. Ruby my dear
2. Round about midnight
3. Crepuscule with Nelly
4. Evidence
5. Monk's mood
6. Straight no chaser
7. Reflections
8. Little Rootie Tootie
9. Pannonica
10. Let's cool one
11. Ask me now
12. Misterioso
13. Ugly beauty
モンクの曲に目が無い私としては買わずにはおれません。
モンクのユニークな楽曲を全編、バンドネオンで弾ききろうという意気込みをかいたいですね。
バンドネオン特有の物悲しく、うら寂しい響きが意外とモンクの楽曲とマッチする事に驚きます。
勿論、OLIVIER MANOURYの技量とアレンジによるところが大きいとは思うのだけど、新鮮な響きを出す事に成功していると思う。
アルバム前半はスローナンバーが続く。目を閉じて聴いていると、パリの裏通リの地下のバールで、深夜に1人でいるような気分になってくるから不思議。
ミディアムテンポの曲ではスリリングなインタープレイも見られ、ジャズ度がぐんと急上昇する。
一貫して流れているのは、優雅であり、アンニュイな退廃の空気感。
無味無臭の音楽が多い中、この作品はとても個性的で、芳しい匂いを放つ胡蝶蘭のような作品だと思う。
またひとつ、新しい宝石を手に入れた気分になれるのではないだろうか?
メンバーはOLIVIER MANOURY(BANDONEON)YVES TORCHINSKY(B)
録音は1999年  PARIS
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NATHEN PAGE PIANO
昨日、届いたばかりのアルバムで、NATHEN PAGEの最新作はなんとピアノトリオ作品なのです。
NAHEN PAGEの奥さんが送ってくれたようで、エスニックなプリントのしている箱に入れられて送られてきた。
ネイサン・ページを初めて聴いたのは、70年代後半硬派な作品をリリースしていたBAYSTATEレーベルのチャールズ・トリバーの作品によってだった。
ページのギターは決して器用とはいえないながら素晴らしい歌心とパッションを秘めた演奏は強く印象に残ったのを覚えている。
それ以来、ページの名前を耳にしたり、目にする事はほとんどなかったのだけど、
つい先日、何気なしにページの名前を検索したらホームページがあるのが分かりこの作品を購買することとなったのです。
ページ自身、プロとしてピアノ演奏は1980年から行っていたらしいが、1998年、BRADENTONという街に引越ししてから、地元のレストランパブ「ISLAND'S END」でピアノ演奏による活動を定期的におこなうようになった様だ。
この作品はそれから4年後の同レストランでのライブをCD-Rにしたもの。
ネイサンのピアノは、やはりギター演奏と同じく、決して器用とは言えないし、
現役の一流ピアニストと比べたらテクニック的に見劣りするとこともあるかもしれない。
しかし、この演奏はとてもアジがある。
どちらかというとジャズの表舞台にあまり顔を出さず、今は田舎町でひっそり暮らしながら、地元のファンに囲まれながらライブに精をだすネイサン。
そんなネイサンのジャズへの強い思いがこの作品からは、人一倍感じられるのだ。
録音も良い。
楽器の音はもちろん、ネイサンのレコーディングに集ったファンの暖かい歓声や食器やグラスの触れる音などが臨場感豊かに収録されていて、このレストランの前の方で聴いている気分になれること請け合い。
今夜はバーボン片手にもう一度聴いてみることとしよう。
曲目は、Caravan, When I Fall In Love, Summertime, Never Let Me Go, Love For Sale Everything Happens To Me, My Favorite Things, You Make Me Feel Brand New, Juuuuust Henry (By Nathen Page), Shadow Of Your Smile
メンバーはNATHEN PAGE(P)GARY DEARY(B)HENRY PAGE(DS)
録音は2002年9月20日 BRADENTON
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MARIA SCHNEIDER ORCH
グラミーアワードを獲得した前作と同じアーティストシェアからリリースです。
このメンバーの顔ぶれを見て思わず発注してしまいました。
録音は少し前の、2000年1月、DAVID BAKERの録音によるもの。
Track Listing: Lately; The Willow; That Old Black Magic; My Ideal; Last Season; Começar de Novo; Days of Wine and Roses; Over the Rainbow; Bird Count.

Personnel: Maria Schneider: composer, arranger, conductor; Tim Ries: alto and soprano saxophone, clarinet, flute; Charles Pillow: alto and soprano saxophone, clarinet, flute; Rich Perry: tenor saxophone, flute; Rick Margitza: tenor saxophone, flute; Scott Robinson: bass and baritone saxophones, bass clarinet, clarinet, flute; Tony Kadleck: trumpet, flugelhorn; Greg Gisbert: trumpet, flugelhorn; Laurie Frink: trumpet, flugelhorn; Ingrid Jensen: trumpet, flugelhorn; Keith O’Quinn: trombone; Rock Ciccarone: trombone; Larry Farrell: trombone; George Flynn: bass trombone; Ben Monder: guitar; Frank Kimbrough: piano; Tony Scherr: bass; Tim Horner: drums.

メンバーの顔ぶれも2000年にENJAからリリースされた名盤「ALLEGRESE」とほぼ一緒なので、クオリティーの高さは聴かずとも期待できる。
特にサックスセクションのマンバーといったら、いずれもがリーダーアルバムを相当枚数吹き込んでいる強者ばかり、トランペットもIngrid JensenやGreg Gisbertの名前が見える。
当作品は、ライブ盤ということもあって、「ALLEGRESSE」のような全作オリジナル作品ではなくて、ハロルド・アーレン、ヘンリー・マンシーニ、リチャード・ワイティングやイバン・リンスの曲を取り上げており、オリジナル作品も聴きやすい曲調のものが多くて、よりエンターテイメント性を高めた作品だと言える。
マリアの独創的な手法が薄めれれているかといえば、決してそういう訳ではなくて芸術性、オリジナル性をしっかりとキープしているところは賞賛される。

綺羅星のようなメンバーによるソロももちろん素晴らしいが、アンサンブル部分でのマリア・シュナイダーならではのまさにサウンドの妙というべきベルベットのような響きが、このアルバムでも聴き物になったいる。
オーケストラの維持、活動は(特にこのような凄いメンバー)今も昔も大変だろうけどいつまでも活動を続けてもらいたい。
そして、こういう真のアーティストを来日招聘することを、切に願う。
同じ顔ぶればかりのマンネリ気味の大型ジャズフェスティバルなどに、是非招聘してもらいたい。
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KASPER VILLAUME
デンマークの若手ピアニストKASPER VILLAUMEの新作。
今年6月、ボブ・ロックウェルのカルテットで来日するらしい。
(先日、マシュマロレコードのオーナー、上不氏からメールで教えていただきました。)
前作も切れ味鋭い快適ピアノトリオ盤だったが、今回はテナーのクリス・ポッターを加えたカルテット作で、同編成はラルス・メラーとのカルテット盤以来だと思う。
最近のポッターは、ひとつ殻を破ったようで、このレコーディングでも弾け具合が素晴らしい。CONCORDやCRISSCROSSの初期の作品では、上手いんだけど優等生的な面が鼻につき、サウンド面でも凝ったつくりのものが多かったけど、今一歩心に迫るものに欠けたのも事実。
当アルバムでは、ストレートな吹奏を展開しているが、その堂々たるや、ふてぶてしさや不良性を感じさせる奥行きの深いプレイに成長の跡が窺える。
以前と比べて説得力が数段違うのだ。このアルバムでは音色もよりダークで太く感じるのは気のせいだろうか?
こういうストレートなセッションでも素晴らしい個性を見せるし、ほぼ同時に発売されたSUNNYSIDEからのリーダーアルバムでは、クレイグ・テイボーンやウェイン・クランツをうまく使ったユニークでオリジナル性の高いジャズを演奏しており高く評価できる。
KASPER盤に戻ると、各プレイヤーの個人技はもちろん、セッションに関わらずバンドとしての一体感溢れたサウンドが素晴らしいです。
KASPERのピアノはもちろん、ALI JACKSONのドラムのしばき具合が良いですね。
キャスパーは、CAPTAIN KIRKLAND」「HANDS」「CLOUDY&BLUE」「GROOVE STREET」作曲も非凡な才能をみせていてこのバンド、1回きりのセッションに終わらすには勿体無いくらい良い出来だと思う。
蛇足だが、CDのレーベル面には、手の押し型がプリントされていて凝ったつくりとなっている。
メンバーはKASPER VILLAUME(P)CHRIS POTTER(TS)CHRIS MINH DOKY(B)ALI JACKSON(DS)
録音は2005年8月9日  NJ
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DANILO PEREZ
最近入荷したばかりの、DANILO PEREZ TRIOの最新作。
「ARTISTSHARE」からのリリースとなっていています。
現在アーティストシェア所属のアーティストは、Maria Schneider、Jim Hall 、Bob Brookmeyer 、Monday Michiru 、Brian Lynch 、Billy Childs 、Jane Ira Bloom 、Rachel Z、Todd Coolman、Deanna Witkowski 、Cuong Vu 、Kevin Hays、D.D. Jackson、Ingrid Jensen、Pete Malinverni 、Donny McCaslin、Dave Peck 、Alex Sipiagin、Kenny Werner、Nora York、Dave Binney 、Edward Simon ら錚々たるメンバーが名を連ねていて、増加の一途をたどっているようだ。
従来のレコード会社と違う点は、アルバムリリース、販売だけではなく、そのアーティストに対して様々なサポートを行う為のソフト(商品)が用意されている点です。
このDANILO PEREZの場合、CD販売以外に、例えば、Live Participant: Regattabarという商品の場合、購入者はRegattabarでのライブ演奏のダウンロード、フォトセッションの閲覧、インタビュー、楽譜の閲覧などが出来るし、Piano Player Participant の場合、オンラインでダニロから直接ピアノのレッスンが受けれるといった具合です。
ブロンズ、シルバー、ゴールドなどもっと高額でアーティストに深く関われる商品もあり、そのアーティストのファンでサポートしたい人にとってはたまらないソフトもラインナップされています。
つまり、ある意味タニマチ気分が味わえるのですね。
ジム・ホールの場合、最も高額なParticipantとしてなんと、エグゼクティブ・プロデューサーの権利というのがある。ちなみにお値段は20,000ドル。
限定数1です。ちなみにアルバムへ名前のクレジット、ジム・ホール・モデルのギター、自筆の認定書、ARTISTSHAREの全てのプロジェクトへオンラインによるアクセス権などが付いている。240万円でどなたか買いませんか?(笑)

実際、熱狂的ファンにとって各地で行われるライブのダウンロードは興味深いかもしれない。
このアルバムについて述べる時間がなくなってしまったけど、ズバリ、トリオによる快演が聴けます。
なんといっても、メンバーがメンバーですから、悪くなろうはずが無い。
Danilo Perez(P)
Adam Cruz(DS)
Ben Street(B)
録音は2003年12月4-7日
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HAL STEIN
1928年生まれのハル・ステインはジャズの生き証人の1人。
ドン・バイアス、チャーリー・パーカー、テディ・ウィルソンらとタウンホールで共演したこともあり、戦後間もない頃、来日したこともあるはず。
主な作品は「Hal Stein & Warren Fitzgerald」 (Progressive 1955)や「Four Altos」 Gene Quill Phil Woods Sahib Shihab and Hal Stein (Prestige 1957)などが有名です。
ステイン名義のリーダー作はなんとこれが初めてとなる。
録音当時、76歳、どうしてどうして、力強いサックスが聴かれる。
サックスのブロウだけではなく、音楽的に新しいことに挑戦していこうという気概が感じられて素晴らしいですね。
それは、このアルバムの為に選ばれた曲を見ても分かる。
ハービー・ニコルス「SHUFFLE MONTGOMERY」TOM CHRISTENSEN「OR NOT」やGARY SMULYANの作品で知ったという「THANKS A LOT」アンドレ・プレヴィンのボサノバナンバー「TWO FOR THE SEESAW」、ビリー・ストレイホーンの「LE SCARE SUPREME」など渋い曲、御馴染みの「SWEEY AND LOVELY」「CRAZY HE CALLS ME」「AUTUMN NOCTURNE」などがいいバランスで収録されている。
これは、このカルテットのピアニスト兼プロデューサーLEE BLOOMを評価すべきでしょう。
ステインは難しい事は何もしていない、只自分の感じたままを実直に、思いのたけをサックスに息を吹き込んで表現しているだけだ。
それが、どうしてこうもストレートにこちらに伝わってくるのだろう?
ジャズの歴史を一緒に歩んできた、まさに「あの頃」を経験したミュージシャンでしか持っていない雰囲気をこの人も持ち合わせている。
単に「年輪」という言葉だけではかたずけられない何か・・・
私のベスト曲は8曲目「TWO FOR THE SEESAW」。
ハリー・アレンの録音も結構だが、こんな現役バリバリの老ミュージシャンのレコーディングも企画してくれぃ!日本のレコード会社。
メンバーはHAL STEIN (TS)LEE BLOOM(P)JOHN WIITALA(B)DANNY SPENCER(DS)
録音は2005年1月31日、5月1日  CA
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RIGMOR GUSTAFSSON
前作のバカラック集が大好評だったRIGMOR GUSTAFSSONの最新作で、今回はミッシェル・ルグラン集です。
バカラック、ルグラン、ジョビンの目が無い私としては買わずに、そして仕入れずにはおれない一作です。
ゲストにNILS LINDGRENのボントロやMAGNUS LINDGRENのテナー、TINO DERADOのアコーディオンを効果的にフューチャーした音作りは、ジャズとポップスのテイストが絶妙なバランスで配分された聴きやすい一作となっている。
RIGMORの北欧の空気が感じられる、ほのぼのとしたスローライフの雰囲気ながら凛とした強い意志も感じられる佇まいも、健在ながら何と言ってもルグランの楽曲の素晴らしさが一等賞。
ルグランの美曲を、リーグモルは気負う事なしにナチュラルに唄い綴っていく。
バックのサウンドは、プロフェッショナルな仕事がなされていて、様々なシチェーションにおいて使用可能な許容範囲の広い聴きかたが可能だと思います。
朝の通勤時間に、午後のティータイムに、夕暮れ時の1人の時間に、ナイトキャップのおともに・・・
リーグモルのマイナスイオンを含んだ爽やかな歌声が優しく包み込んでくれるだろう。
「The Summer Knows」 「 Windmills Of Your Mind 」「How Do You Keep The Music Playing 」 「 Once Upon A Summertime 」「 Where’s The Love 」「 Watch What Happens 」「What Are You Doing The Rest Of Your Life 」「You Must Believe In Spring 」など有名曲をバッチリ。
「One At A Time 」っていい曲も発見できたし、万人向けのいいアルバムです。
メンバーはRimor Gustafsson(vo) Jonas Ostholm (p,Hammond B3)Christian Spering (b)Johan Lofcrantz Ramsay (ds,per)Daniel Tilling (p,Wurlitzer)
Thobias Gabrielsson (Fender b)Martin Hoper(b)Jonas Holgersson(ds)GUEST:Tino Derado (accor,p)Magnum Coltrane Price (vo)Magnus Lindgren(ts,bs)Nils Landgren(tb)
録音は2005年10月 STOCKHOLM
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NATHEN PAGE
残念な事にネイサン・ペイジのギターはもう聴くことが出来ない。
何故なら、2003年に癌でなくなったから。
親切な方が教えてくださり、それで知ったのです。

このCDとピアノトリオ盤をNATHEN PAGEのHPで知り、ファンだった私は直ぐに注文したのです。
こう付け加えて・・・「70年代後半吹き込まれたチャールス・トリバーのアルバムで聴いて以来あなたのギターのファンです」と・・・
メールは奥さんの名前で翌日に返ってきた。「明日、荷物を送るわよ」と。
ベテランミュージシャンには、PCやメールを全くしない人は珍しくないので、変わりに奥さんがその辺りのマネージャー的役割をやっているのだろうと思っていた。
10日後に届いた荷物の送り主の名前も奥さんの名前になっていた。

ネイサン・ペイジの死をそんな経緯で、とになってから知ったとき少なからず動揺を覚えた。
この作品は。ネイサンがジャズギタリストとして最も油の乗っていた時機の1982年に素晴らしいメンバーと録音したもので、2000年リマスタリングされてリリースされた。
骨太の少し乾いた音色で、無骨ともいえるようなスタイルで前へ前へと、ホーンライクに歌心あるフレーズを紡ぎだすネイサンの特徴がミディアムからアップテンポの曲によく表れている。
「SUNDAY MORNING SAMBA」「REBA」などのオリジナル作品も良いですね。
ネイサンの場合、「REBA」で聴けるようなバラードがまた絶品なのですね。
決してべとつかないビタースイートな味わい。
ハードボイルドなのですよ。レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウの感じかな?
4曲目、これは時代感じさせるサウンドでちょっと可笑しい。
この当時は、みんなフュージョンっぽいこと結構やっていたんだよね。
ラストはジョーヘンの「INNER URGE」できっちり締めくくってくれる。
忘れてしまうにはあまりにも惜しいネイサン・ペイジのギターにもう一度耳を傾けて欲しい。
ジャズギターファンを語る人はもちろん、ケニー・バロンのファンの方にお薦めです。
メンバーはNATHEN PAGE(G)BILLY HART(DS)KENNY BARRON(P)BUSTER WILLIAMS(B)
録音は1982年9月27日
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ADA ROVATTI
イタリア生まれの女性サックス奏者で、現ランディー・ブレッカー夫人ADA ROVATTIの2005年最新アルバム。
DAVID KIKOSKI,ED HOWARD,BEN PEROWSKIという最高の布陣で臨んだカルテット編成に、ゲストとしてBOB MINZER,DON ALIAS,ADAM ROGERSらNYファーストコールミュージシャンが参加した豪華作品。
あっー、もちろんランディーも参加しています。
前作、「UNDER THE GATE」は国内盤も発売され、サックスファンには既に認知されているROVATTIだと思うが、最新作も基本的に前作のやり方を踏襲した作品だと思う。
昔は女性のサックス奏者というと、ほんとに数少なく、バーバラ・トンプソンやジェーン・アイラ・ブルームぐらいしか思いつかないが、今は世界的に頭角を表している女性奏者が数多く出てきている。
認知度とPOP度でいったら、キャンディー・ダルファーが一等賞だろうけど、ADAの指向しているサウンドはもっと本格的なジャズで、楽器のテクニック プラス サムシンエルスがよりシビアに求められる世界。
アイラ・ブルームやジェーン・バネットほど、悪く言えば、強迫観念にとらわれた神経質なサウンドではなく、アダ・ロバッティの音楽はラテン民族特有の陽気さやおおらかさに溢れているのがいいですね。
せこせこしたところがないのである。
もちろん音楽的には凄いことしていますよ!バックのファーストコールミュージシャンとなんらひけを取らないプロフェッショナルなプレイ、マイケル・ブレッカーを彷彿させるところもある。
で、彼女が現在、サックス界の十本指に入るかというと、残念ながらNOである。
現代テナーサックス界の層はそれほど、厚く、おいそれとは先頭集団にははいれないのだ。
アダは、女性奏者としてトップテン入り(個人的な尺度に過ぎず、トップテン入りする必要性もスポーツではないので全然ないのですが・・・)するポテンシャルを最も持っている人材だと思うのでより今後の活躍に期待していきたい。

最後に蛇足だけど、ランディーってもてるよなぁ!
メンバーはADA ROVATTI(TS,SS)DAVE KIKOSKI(PED HOWARD(B)BEN PEROWSKI(DS)
GUEST:JIL McCARRON(P)RANDY BRECKER(TP,FLH)BOB MINTZER(BCL)DON ALIAS(PER)ADAM ROGERS(G)
録音は2004年12月7,8日 NJ
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